医療関係者様へのメッセージ
近年の高精度な放射線治療法として、強度変調放射線治療:intensity modulated radiation therapy ( IMRT) 、回転型IMRT (VMAT、RapidArc)があります。
最新の技術として画像誘導放射線治療:image-guided radiotherapy(IGRT), 呼吸性移動対策として呼吸同期照射法が多くの施設で行われています。現在新たな革新的技術が脚光を浴びています。
フラットニング フィルタ フリー (flattering filter free:FFF) でのX線エネルギー出力を可能とした治療装置が登場しました。
最も進化した革新的な放射線治療装置TrueBeam STxをフル装備で導入した吹田徳洲会病院は2014年7月1日に開院しました。
(1) 5種類のX線と8種類の電子線の出力
治療部位に対応した、最適なエネルギーを選択できる万能型放射線治療装置です。X線の2本はFFFモードで出力が出来る。
(2) フラットニング フィルタ フリー(flattering filter free:FFF)モードのX線
従来のリニアックは、照射領域(照射野) 内をできるだけ均一な線量となるように、X線束の間に散乱体( flattering filter)を入れている。
そのぶん線量率が下がる(照射時間が長くなる)が、 FFFでは、それを除去することにより現在の4倍もの照射量を一度に投与可能となる。
X線出力が最大2400MU/分(10MV)の高線量率を得られるため、短時間、低MUの照射が出来る。患者に照射される散乱線の低減と照射野外への漏洩線量を減らす事が出来る。
(3) 高精度マルチリーフコリメータ
2.5mm幅×32対(=80.0mm)のリーフが中央部にあり、その外側に(5.0mm幅×14対)×2(左右)(=140.0mm)のリーフがある。
マルチリーフコリメータはリアルタイムにビームの照射形状を成型する事が出来る。
(4) 高画質イメージングシステム(KV IGRTとExacTrac)
画像誘導による治療位置決めと、治療計画CTのDRR(digitally reconstructed radiograph)と画像照合をするためには、治療装置に装備してKV-X線を用いたOBI(on board imager)と装置の外に配してKV-X線と赤外線反射マーカを用いた位置決め装置ExacTracがある。
OBIによる患者位置決めはKV-KVmatchingとCBCT(cone-beam computed tomography)の方法を選択できる。
赤外線装置は照射中患者の動きをリアルタイムに監視する事も出来る。
MV-X線によるEPID(electronic portal imaging device)は照射中の画像取得が出来る。
(5) 呼吸同期システムRPM(real-time position management)
RPMは患者の呼吸による3次元的な動きを解析できるため、呼吸性移動がある部位への照射に有効である。治療計画CT撮影時、同時に画像と連動した呼吸パターンを取得することにより呼吸同期照射が可能となる。respiratory-gated治療ができる。
高精度な放射線治療を施行するため、吹田徳洲会病院では放射線治療装置と治療計画装置、マルチリーフコリメータ、治療計画用CT、呼吸同期システム、大線量率照射ビームなどの精度や物理特性の測定、検証と理解に十分な時間を割き、スタッフによる重複した確認作業を実践している。
治療計画時には標的(Target)の正確な位置設定と動き等によるマージン設定、周囲正常臓器(Organ at risk)への線量制限の正しい評価が必要である。標的(腫瘍等)体積への正確な照射と、可能な限りの正常組織への少ない線量投与が治療成績を大きく左右する。KV、MVのイメージングシステムは治療時の正確な位置精度や照射精度に有効である。RPM(Real-time Position Management)を備えた呼吸同期照射は治療計画CT撮影と同時に画像と連動した呼吸波形データを取得することが出来る。FFF大線量率照射機能を用いると、極短期息止め照射が可能となるため、治療患者の負担を大幅に抑えることは臨床上大きな利点である。
吹田徳洲会病院では治療装置の精度管理に、2009年、米国医学物理学会(american association of physicists in medicine : AAPM)から発行された、最新の放射線治療技術に対応した放射線治療装置の精度管理プログラム「タスクグループレポート142(TG-142)」(american association of physicists in medicine Task Group 142 report: quality assurance of medical accelerators) を順守し、放射線治療技術に要求される物理的・機械的精度の管理、励行を行っている。
吹田徳洲会病院の放射線治療装置TrueBeam STxは最も進化した最新鋭の放射線治療装置であり、操作と管理には高度な専門性が要求さる。放射線治療科スタッフは徹底した精度管理と安全管理を行って、情報の共有、分析から医療事故防止に全力を注いでいる。そのために、スタッフは日ごろの研鑽を怠る事無く、高精度な放射線治療技術を学び、治療装置、治療機器の品質保証と品質管理を実行する。吹田徳洲会病院放射線治療科では、大阪大学小川教授の指導を受けて、安全管理、品質管理に必要な機器を用意した。主な機器を紹介する。
安全管理、品質管理に必要な機器一覧
●N30013型防水型Farmer chamber
●3D Pinpoint chamber
●PPC40型防水型Roos電子線chamber
●ミニファントム
●精密アネロイド気圧計
●WP34型側方照射タイプモニター 校正用水ファントム
●3次元水ファントム 「Blue Phantom2型3D水ファントムシステム」
●人体等価材質 「タフウォータファントム」
●幾何学的精度管理ツール 「MT-IAD-1アイソアライン」
●治療計画用QCツール「100-1004型 QUASARマルチパーパスボディファントム」
●QCツール 「ZEROS-KJCSET レーザ墨出し器」
●平坦度チェッカー 「1174型ビームプロファイラー2」
●モーニングチェック用線量計 「1094型チェックメイト2」
●9DP型電離箱サーベイメータ
●4Dローテーショナル線量検証システム 「ArcCHECK 4DアイソトロピックArcデリバリQA」
●2D線量強度分布評価システム 「1177型マックチェック2」
●IMRT・定位用ファントム 「BS40 IMRTボディファントム」
●リニアック精度管理ソフト「Dkanリニアック精度管理ソフトパッケイジ」
●RMI467型治療計画用CTファントム