当科について
当院では、沖縄中部徳洲会病院の疼痛治療下のバックアップの元、常勤医師が疼痛治療を行っております。
疼痛治療科の特徴
疼痛治療科は、「痛みが薬だけでは軽減しない」、「薬がただ増えるだけで眠くて仕方がない」、「おなかが張って苦しいけど、鎮痛薬では楽にならない」など、痛みや苦痛をなんとかしてほしいという希望に応えるために2023年4月に設立された新しい専門科です。我々は、主にがんの痛みを軽減するために、内服、貼付、注射薬、神経ブロック、脊髄鎮痛法など、患者様ひとりひとりに合わせた、あらゆる痛みの治療法を考えて実施していきます。皆様が主治医から処方されている鎮痛薬では痛みが思うように軽減できていない時や、鎮痛薬の副作用で眠気が強く日常生活に支障を来している時などには、主治医と協同してペインクリニックの技術を駆使して痛みの治療に取り組みます。我々が実践している治療内容を以下に簡単にまとめましたのでご覧ください。
1) 一般的な鎮痛薬の調節
痛みが軽度であれば、打撲傷や歯を抜いた後などに処方される非ステロイド性鎮痛薬やアセトアミノフェンといった内服薬が出されます。これらの薬剤でうまく鎮痛ができないときに、問題点を見つけて内服時間や回数の変更などのアドバイスを患者様に直接または主治医に助言します。
2) オピオイド鎮痛薬の調節
「オピオイド鎮痛薬」は麻薬性鎮痛薬の専門的な言い方です。「麻薬」と聞くと誰もが恐怖心を抱くことでしょう。そこには皆様の大きな誤解があるからです。オピオイドは、上記の「1) 一般的な鎮痛薬の調節」では痛みが軽くならない時に使用する「痛みの程度に応じて調節できる」鎮痛薬です。よく「強い鎮痛薬」と表現されますが、そうではなく「強い痛みにも対処できる鎮痛薬」なのです。「強い鎮痛薬」=「強い副作用」というイメージを持たれがちですがそれも誤りです。副作用に、眠気、便秘、一時的な吐き気などはありますが、胃・腎臓・肝臓など臓器を悪くするような副作用はありません。また、一度使用したら二度と止めることができないと思われがちですが、これも間違いです。急に止めると退薬症状(冷や汗、不安など)が出ますが、少しずつ減量すれば中止することも可能です。また、痛みに対して使用している限りは、中毒や依存症になることはありません。 疼痛治療科では、一般的な薬剤に加えて、オピオイド鎮痛薬を使用して痛みを軽減させます。患者様の生活スタイルや病状に合った薬剤の選択、投与量の調節、副作用の吐き気や便秘に対する治療薬の処方なども行います。 また、「どうしても麻薬性の鎮痛薬を使いたくない」、「これ以上麻薬の量を増やしたくない」、という方には、後述の神経ブロックや脊髄鎮痛法などで痛みを軽減してオピオイド鎮痛薬の量を減らすことも検討できます。
3) 注射薬での調節
入院中に実施することが多く、主にオピオイド鎮痛薬の注射薬を使用します。検査前・手術前後・消化管の問題などで薬を飲むことができないときや、緊急で鎮痛が必要な時に使用します。ここでも患者様ひとりひとりに合わせた薬剤、量を計算しながら調整していきます。
4) 神経ブロック療法(神経破壊法)
鎮痛薬の内服や貼付だけでは十分痛みを軽減することができないときは、痛みを感じている神経をブロックします。神経ブロック療法(神経破壊)といいます。「神経破壊」というと恐そうですが、痛みを感じている神経を長期間マヒさせる方法と思っていただければ良いです。実施すると多くの方で飲んでいる鎮痛薬の量を大幅に下げることができます。神経ブロックには、内臓の痛みに行う腹腔神経叢ブロック、上腸間膜動脈神経叢ブロック、下腸間膜動脈神経叢ブロック、上下腹神経叢ブロック、肛門部の痛みに行うフェノールサドルブロック、肋骨部の痛みに行う肋間神経ブロックや胸部脊髄くも膜下フェノールブロックなどがあります。神経ブロックをして内服の鎮痛薬が減れば、副作用も少なくなります。適応については患者様各々で異なりますので、主治医と相談しながら決めていきます。
5) 脊髄鎮痛法
脊髄の近くにカテーテルを入れ、直接鎮痛薬を投与する方法です。内服に必要な量の何十分の一の量で、よりよい鎮痛効果を発揮します。硬膜外鎮痛法と脊髄くも膜下鎮痛法とがあります。内服や貼付薬で痛みが取れないときや神経ブロックの適応にならないときに選択します。当科では、このカテーテルが抜けたり、感染したりしないように、体内に埋め込む手術も行っています。カテーテルから薬液を注入するためのポンプを携帯して生活しなくてはならない欠点はありますが、多くの患者様の痛みや腹部膨満感の軽減に寄与している鎮痛方法です。
6) 専門的がん疼痛治療の実践と教育
上記のように、麻酔科で培った技術、ペインクリニックで積み上げた経験を礎にがんの痛みに専門的に対処するのががん疼痛治療科の使命です。その方法をこれから将来の医療を担う若手医師にも継承していきます。がんの痛みで辛くなった時でもがん疼痛治療科として患者様に、専門的疼痛治療を提供できるようにしていきます。
7) がんの痛みの専門治療の全国展開
がんの患者さんに対する神経ブロック、脊髄鎮痛法などの治療は、残念ながら、現在どの病院でも受けられる治療ではありません。専門的な痛みの治療ができる医師が減っており、どこの病院にもいる訳ではないのです。麻薬の内服や点滴治療でとれないようながんの痛みがある場合は、ぜひ吹田徳洲会病院窓口にご相談ください。
担当医
徳川 茂樹とくがわ しげき
部長
略歴・経歴
1999年卒
資格・専門医
日本麻酔科学会認定医・専門医・指導医
所属学会
日本麻酔科学会
日本ペインクリニック学会
日本臨床麻酔学会
服部 政治はっとり せいじ
協力医師
中部徳洲会病院 疼痛治療科統括部長 兼 麻酔ペインクリニック部長
略歴・経歴
大分大学出身
資格・専門医
日本麻酔科学会専門医
日本ペインクリニック学会専門医
日本医師会認定産業医
所属学会
日本麻酔科学会
日本ペインクリニック学会
日本がん サポーティブケア学会
IASP(国際疼痛学会)
MASCC
IARS
APS
前 知子まえ ともこ
協力医師
中部徳洲会病院 疼痛治療科部長 兼 麻酔ペインクリニック部長
略歴・経歴
東京女子医科大学
資格・専門医
日本麻酔科学会指導医・専門医
日本ペインクリニック学会専門医
日本医師会認定産業医
所属学会
日本麻酔科学会
日本ペインクリニック学会
日本慢性疼痛学会
日本区域麻酔学会
日本がんサポーティブケア学会
IASP(国際疼痛学会)
ASA(アメリカ麻酔学会)
IARS