地域医療科の目指す医療
多職種が連携しながら患者さんやそのご家族の気持ちに寄り添い、退院後の生活も見据えて、“健康寿命”や“幸福寿命”の延伸を目指した医療を目指していきます。
地域医療科の思い
日本は世界でも有数の長寿国でありますが、平均寿命が伸びたことで日本人は幸せになっているでしょうか?
「人生100年時代」といわれるほど日本人の平均寿命が延伸をたどる一方で健康寿命の伸びはそれに伴っていません。幸福寿命についていえば縮まっているようにさえ感じます。
急性期の臨床現場に長年携わってきて多くの高齢者の医療現場を診てきました。日本の人口動態の変化とともに、最近20年明らかな疾病構造の変化を感じています。生活習慣病を代表とする慢性疾患、がん、精神疾患、アレルギー、認知症、老年症候群そして病名がつかない多くの不定愁訴を訴える患者が明らかに多くなってきています。
また病院の中だけでなく新聞、テレビを見ても将来に不安を感じさせる出来事が世界的に目に付きます。超高齢社会、年金などの老後の問題、地球温暖化を始めとする環境問題、自然災害、核兵器、デモストレーション、新興感染症や再興感染症等など。多くの方が未来に対して閉塞感を感じています。ヒトそして国自体に余裕がなくなれば、当然周りに対しても優しくなれなくなってきます。またそれぞれの個人が自由になりすぎ、血縁、地縁、社縁をはじめ人類の繁栄に欠かせない繋がりと協力がなくなると同時に、多くの方が自分の居場所を探しているような感じがします。テクノロジーの発展は手段であって決して目的ではありません。SNSはバーチャルな繋がりであり、決して温かみのある縁ではありません。
医師がなぜこのようなことを考えるか?病院外のことは行政や民間団体に任せることが今までの正論だったかもしれません。しかし、いくら病気をコントロールして地域、在宅に帰ったとしても生活習慣の乱れ、心の乱れ、環境の乱れ、縁の乱れ、そして社会の乱れがあれば確実に病気は悪くなります。それどころか新しい病気を作り出します。高齢者においては特にそれが顕著です。病気のことだけでなく、家に帰ってからの生活や社会との繋がりを医療多職種、行政、民間団体、そして患者個人と一緒になってコーディネートすることも大切な医療のひとつだと思います。それがこれからの時代に益々求められものであると考えています。
医療とは究極のサービス業であり、「幸福を創ること」が本来の役割と考えています。
地域医療科 部長 辻文生
地域医療科の役割
- 吹田徳洲会病院 地域包括病棟(8北病棟)の運営、管理
- 吹田市の地域包括ケアシステムの構築
- 予防医療(一次、二次、三次)の推進
- 終末期医療、ACP(人生会議)の推進
- 西洋医学だけでなく伝統医学や補完代替医療の実践
- 行政、民間団体、医療機関との連携強化
- 笑顔そして笑いの発信
ACP(人生会議)をともに考える 大阪府薬雑誌 2020年5月号
地域包括ケア病棟とは?
地域包括ケア病棟では病名に関係なく、在宅復帰を目指す幅広い患者さんの入院を受け入れます。例えば、各種手術や肺炎などの急性期治療を終え在宅復帰に向けてリハビリテーションが必要な患者さん、糖尿病やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)など生活習慣指導が必要な患者さん、社会資源の調整がなければ在宅復帰が困難な患者さん、レスパイトケア(患者さんを介護する家族の一時的休息)が必要な患者さんなどそれぞれの病気、生活環境に応じた個別化医療を提供していきます。
入院患者さんに関しては在宅復帰するために、単に診療やリハビリを提供するだけでなく、退院してから地域と繋がりをもって幸せに在宅で生活することのお手伝いをしていきます。
地域医療科の思いイラスト入院中に一人ひとりの患者さんにとって何が大切なのか、どのような生き方が幸せなのか一緒に考えていき、患者さん自身に“気付き”を得てもらいたいと思います。具体的には、病棟内での音楽療法、アロマテラピー、ヨガ体操、マインドフルネス、そして院内敷地の一角に地域ボランティアのご尽力で設けられたオーガニックの農園で土いじりを体験する園芸療法なども想定しています。
ただし、入院期間の上限は60日と決まっていますので、それ以上の長期入院をご希望の方はご相談ください。
医療関係者様へ
地域包括ケア病棟についての説明書
当院の地域包括ケア病棟は急性期治療を終えたあと、すぐに在宅や施設へ退院するには不安のある方、レスパイト入院(介護者の一時休養)の方など、疾病を問わず、リハビリの継続や在宅サービスの調整など、在宅復帰に向けてさまざまな支援が必要な患者様にご利用頂く病棟です。
〇入院期間について
地域医療科の思いイラスト入院期間は、60日を限度としております。
施設入所をお考えの方や、自宅で介護保険を利用していかれることをご検討されている方は、早期に介護保険の申請をお願いします。
〇入院居住費について
地域医療科の思いイラスト入院にあたりまして、一般病棟より1日370円/日が追加費用となりますのでご了承ください。
〇おむつリースについて
地域医療科の思いイラスト400円/日でおむつリースが利用可能です。おむつをお持込み頂く場合は、当院で使用しているものと同程度の吸水性があるものをご用意ください。
〇口腔ケア用品について
地域医療科の思いイラスト100円/日でご利用できます。セットの詳細や申込はナースステーションでご確認下さい。
〇病棟スタッフについて
地域医療科の思いイラスト看護師数は一般病棟に比べ減りますが、一般病棟とは異なり、退院後の生活を考えた取り組みをしています。患者さん、ご家族の協力が必要になることがありますのでご理解ください。
〇主治医について
地域医療科の思いイラスト入棟した時点で、地域包括ケア病棟担当医師となります。(一部、病状により一般病棟時の主治医が継続の場合もあります)
地域包括ケア病棟への入院の流れ
- 当院の地域医療科医師が「診療情報提供書」確認し、入院適用のある方につきましては、外来の予約日を相談(完全予約制)。
- かかりつけの病院より「診療情報提供書」及び「入院・転院前の外来申込書」を当院の医療介護連携室宛てにFAX(06-6878-5222)にて送付
- 受診日当日は、総合受付②窓口にお越しいただく。
※患者ご本人様が来院できない場合は、ご家族様のみ来院でも可。
※ご家族様面談の場合は、自費扱いとなります。面談料3,000円(税別)となります。 - 地域医療科医師が患者様、ご家族様との面談にて入院の可否を判断。
- 当院よりかかりつけの病院に対して、入院の可否の報告及び入院日(転院)の相談。
- 入院日(転院)決定
- 入院日(転院)当日は、入退院センター⑨窓口にお越しいただく
Q&A
入院前の外来面談について
Q. 外来面談には本人を連れて行かないといけませんか?
A. 御本人様不在でも外来面談可能です。その場合は、御家族様や医療関係者の方にお越し頂いております。
Q. 外来面談なしに地域包括ケア病棟へ直接入院する事は出来ますか?
A. 原則出来ません。外来面談時に、入院にまつわる注意事項を説明させて頂き、それに同意頂いた上で、入院して頂いております。そのため、初めての入院の場合は、全患者様に外来面談を実施しております。2回目以降の入院の場合は、外来面談なしに直接入院となるケースもあります。
Q. 外来面談の際に入院日は決まりますか?
A. 病室の空き状況によります。 外来面談当日に入院日が決定しない場合でも、出来る限り早急に入院日をお伝えさせて頂いております。
入院について
Q. 最大で何日入院できますか?
A. 最大で60日間となります。
Q. 60日より早くに退院できますか?
A. もちろん可能です。御本人様の病態、御家族様の受け入れ、在宅サービスの調整など状況が整い次第、退院となります。
Q. レスパイト入院※の場合、どれくらいの期間入院できますか?
A. 1~2週間が目安となります。それ以上のレスパイト入院を御希望の場合は御相談下さい。
※レスパイト入院 ・・ 病状的には入院適応でないが、御家族様の介護疲れを取る事などが目的の入院
Q. 入院費用はどれくらいかかりますか?
A. 患者様の年齢、世帯所得、入院日数などによって細分化されます。詳細はお問い合わせ下さい。
Q. 認知症でも入院可能ですか?
A. 可能です。
当科での入院に際し、基礎疾患(持病)の制限はありません。但し、他患者様に対する迷惑行為があまりにも酷い場合は、対応を相談させて頂く場合がございます。
Q. 身寄りがなくても入院可能ですか?
A. 可能です。
但し、施設入居を御希望の場合は、後見人(保証人)の申請が必要です。後見人の手配は、当院の ソーシャルワーカーが行います。
Q. 普段、服用している薬と同じ薬を入院後も継続してもらえますか?
A. なるべく同じ薬を処方します。
院内採用に同じ薬がない場合は、同じ効能の薬を処方させて頂きます。保険制度上、当病棟での処方が難しい薬に関しては、かかりつけ医と相談の上、検討致します。
Q. レクリエーションはありますか?
A. 下記をご用意しております。
① 音楽療法・・病棟のデイルームにてカラオケを用意しております。お好きな時に御利用可能です。
② オセロ、囲碁・・患者様同士の対戦も可能です。
③ アロマハンドマッサージ・・月1~2回エステティシャンが来棟し、希望する患者様に行っております。
④ その他・・現在、企画検討中のレクリエーションがあります。正式に決定次第、ホームページに掲載していきます。
Q. お風呂はありますか?
A. 週2回のシャワー浴が基本となります。介助が不要な方は毎日のシャワー浴が可能です。
Q. 入院中に他科の受診はできますか?
A. 保険制度上の理由から原則的に入院中の他科受診は困難ですが、緊急時など必要に応じて検討させて頂きます。
Q. 入院中に持ち込み食を食べさせる事は可能ですか?
A. 可能です。但し、患者様の病態によっては制限させて頂きます。
リハビリについて
Q. リハビリはどれくらいの時間してもらえますか?
A. 療法士がつくリハビリは、1日40~60分を平日に実施致します。土曜は、担当療法士の勤務に応じた対応となります。
Q. 入院すれば必ずリハビリはしてもらえますか?
A. 原則リハビリをさせて頂きます。
リハビリには、①療法士がマンツーマンでのリハビリ、②療法士が付かないリハビリの2通りあります。
②のリハビリは、療法士が作成したプログラムに基づき、病棟内エルゴメーターや看護師との病棟内歩行などを実施致します。患者様がどちらのリハビリに適しているかは、各々の病態に応じて決定させて頂きます。
Q. リハビリは退院まで継続してもらえますか?
A. 継続させて頂きます。
但し、上記(Q15)①のリハビリは、患者様の状態に応じて適宜終了となる場合がございます。
Q. 退院後も外来でリハビリはしてもらえますか?
A. 外来リハビリは実施しておりません。
退院支援・退院について
Q. 退院後に老人保健施設(老健)へ入所する事は可能ですか?
A. 原則不可です。
当病棟は在宅復帰を目指す病棟の為、自宅やそれに変わる終生施設(有料老人ホームや高齢者住宅など)が退院先の対象となります。老健はそれに該当しない為、原則的に当病棟からの退院先からは外れます。
Q. 地域包括ケア病棟から他病院へ転院することは可能ですか?
A. 原則不可能です。
前述した理由(Q18参照)から、当病棟から他病院への転院は原則適応となりません。
しかし、転院が必要な場合は、適宜検討させて頂きます。
Q. 自宅に帰るか、施設に入居するか迷っています。いつまでに最終決断を下せば良いですか?
A. 入院(転棟)してから1ヶ月以内が目安です。
施設を探す場合、約1ヶ月の時間を要します。そのため、当病棟の入院最大日数60日から逆算し、入院(転棟)してから1ヶ月以内に退院先を最終確認させて頂いております。
Q. 施設入居を考えていますが、沢山あって何処が良いのかわかりません。アドバイスをもらえますか?
A. 退院先に関しては、患者様の病態や御希望のエリア、御予算などに応じ、担当スタッフ(ソーシャルワーカー)が対応させて頂きます。
Q. 60日以上の入院は無理でしょうか?
A. 原則的に不可能です。
しかし、退院直前の体調不良などやむを得ない事情の場合は、退院日を延期する場合もございます。
担当医
辻 文生つじ ふみお
地域医療科部長
大阪大学大学院薬学研究科附属薬学地域医療研究センター 招聘教授
一般社団法人 吹田市理学療法士会 顧問
公益社団法人 大阪介護支援専門員協会吹田支部 顧問
日本ノルデック・ウオーク学会 役員
(平成28年 第5回日本ノルデック・ウオーク学会学術大会 大会長)
公益財団法人 日本尊厳死協会 関西支部理事
略歴・経歴
1996年3月 東京慈恵会医科大学医学部卒業
1996年5月 国立相模原病院呼吸器アレルギー内科
1999年5月 近畿大学医学部附属病院第4内科助手
2003年4月 近畿大学医学部附属病院呼吸器アレルギー内科助手
2006年4月 近畿大学奈良病院呼吸器アレルギー内科 診療助手
2007年4月 近畿大学奈良病院呼吸器アレルギー内科 診療講師
2008年4月 市立吹田病院呼吸器アレルギー内科 部長
2015年~2018年 吹田市健康増進広場整備方針検討委員
2019年4月 吹田徳洲会病院 地域医療科 部長
2019年~2020年 吹田市地域医療推進懇談会作業部会委員
2021年9月~ 地域医療センター センター長 併任
資格・専門医
社団法人日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医
社団法人日本呼吸器学会専門医・指導医
社団法人日本アレルギー学会専門医・指導医
日本呼吸内視鏡学会 気管支鏡専門医・指導医
社団法人日本感染症学会 感染制御医(ICD)
社団法人日本化学療法学会 抗菌化学療法認定医
呼吸器身体障害認定指定医
日本医師会認定産業医
認知症サポート医
介護支援専門員(ケアマネージャー)
医療福祉情報コーディネーター