放射線治療科のご案内
ご挨拶(概要)
世界水準の高精度放射線治療技術を地域に提供します。
Varian社製高精度外部放射線治療装置TrueBeam STx with Novalisを導入し、様々な部位の悪性腫瘍に対して高精度放射線治療(強度変調放射線治療および定位放射線治療)を行っています。
当科の治療対象は広範囲ですが、各疾患に対して高い専門性を持って診療にあたっています。
専門技術師が積極的に患者様と医師との間に入り、高いレベルでの専門治療をともにおこなっています。放射線治療において、患者さんに負担が少ない治療を率先して、強度変調放射線治療(IMRT)を積極的に取り入れています。現在、当院では放射線治療の約90%が外来通院で行なわれており、患者さんは日常生活を過ごしながら、がん治療に臨むことができます。
当科の特徴・特色
患者さんの体に負担の少ない非侵襲治療を提供できる体制を構築しています。
① 前立腺がんの根治放射線治療および術後放射線治療に画像誘導放射線治療技術(IGRT)とIMRTを組み合わせた高精度寡分割放射線治療(21回照射法)を積極的に行っております。
② 当院の産婦人科および大阪大学医学部附属病院産婦人科・放射線治療科と連携して子宮頚がんの根治化学放射線治療を行っております。
③ 高度な位置精度技術を用いた体幹部定位放射線治療(SBRT)を脊椎転移、リンパ節転移(オリゴ転移に限定)、限局性肺がんに行っております。
その他、婦人科がん等の術後強度変調放射線治療や乳がんの術後寡分割放射線治療(16回照射法)などを行っております。
また、当院以外での治療として大阪大学医学部附属病院でのサイバーナイフ(SRS / SBRT)および小線源治療、大阪重粒子線治療センターでの重粒子線治療を協力して行っております。
診断・治療について
対象疾患・症状
当院の放射線治療科で対応している主な対象疾患の一部をご紹介致します。
対象疾患 | 疾患・放射線治療内容 |
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前立腺がん | 前立腺がんの根治放射線治療では寡分割放射線治療(短期間での照射)とホルモン治療の併用によって約90%の無再発生存(いわゆる完治)が得られることが報告されています。当院ではIGRTとIMRTを組み合わせた高精度放射線治療を21回法の寡分割照射を用いた短期照射で行っています。
術後照射でもIMRTを導入して副作用低減に努めております。 また、オリゴ転移(1-5カ所の寡少転移)へのSBRTを積極的に行っております。 |
婦人科がん | 大阪大学医学部附属病院と連携して子宮頚がんの根治化学放射線治療を実施しています。
その他、婦人科がんの術後照射やオリゴ転移へのSBRTを積極的に行っております。 |
乳がん | 乳がんの術後放射線治療は乳房・領域内再発を3分の1に減らす効果があります。当院では16回法による寡分割照射を用いた短期照射に対応しています。 |
その他、悪性腫瘍 | 各種がんの術前・術後照射や緩和照射、オリゴ転移へのSBRT等に対応しています。 |
がん放射線治療セカンドオピニオン外来
大阪大学医学系大学院放射線治療講座教授の小川和彦先生や当院放射線治療担当医による、がん放射線治療に関するセカンドオピニオン外来を毎週火曜日に行っておりますので、ご相談のおありになる患者様は気兼ねなくご予約ください。
治療方法
当院の外科で実施している治療の一部をご紹介致します。
治療法 | 画像誘導放射線治療(IGRT) |
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対象疾患 | 治療対象の全例 |
治療方法・内容 | 放射線治療装置に内蔵されたCT画像検査等の画像技術を駆使することによって、毎回の放射線治療の際に腫瘍本体や周囲臓器を確認して、0.1mm単位で誤差修正して正確な位置への照射を可能にする技術を用いて治療を行っています。 |
治療法 | 強度変調放射線治療(IMRT) |
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対象疾患 | 前立腺がん、子宮頚がん、肺がん等 |
治療方法・内容 | 前立腺癌の根治照射/術後救済照射、子宮頸癌の術後照射や、肺癌の術前照射等に対して、がん組織へ十分な線量を照射することで治療効果を高めつつ、正常組織への照射を最小限にすることで副作用を低くすることが可能となる高度な技術である強度変調放射線治療(IMRT)を行っています。
*前立腺がんに対する根治IMRTについては放射線治療科への直接御紹介ください。 |
治療法 | 体幹部定位放射線治療(SBRT) |
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対象疾患 | 脊椎転移、オリゴ転移性腫瘍(リンパ節等)、限局性肺がん |
治療方法・内容 | 高精度放射線治療装置TrueBeam STx with Novalisを用いることにより、かつてはガンマナイフ、サイバーナイフといった専用の装置を用いて行われてきた定位放射線治療(通称:ピンポイント照射)が可能です。 病巣に対し、さまざまな方向からの放射線を収束させて照射することにより、病巣には強い放射線線量を照射しつつ、周囲への臓器へあたる放射線の量を大きく減少させることができます。現在、当院では定位放射線治療として、保険診療対象となっている30mm未満の頭蓋内腫瘍への定位放射線手術(SRS)および50mm未満の肺癌などへの体幹部定位放射線焼灼術(SABR)を対象に施行しております。今後の保険診療改定にあわせて対象は拡大していく予定です。 *前立腺がんに対するSBRTは大阪大学医学部附属病院に紹介させていただいております。 |
治療法 | 中心線量漸増強度変調回転放射線治療(ICE-VMAT) |
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対象疾患 | 傍大動脈リンパ節転移性腫瘍 |
治療方法・内容 | 胃腸に隣接していて高線量照射が困難な傍大動脈リンパ節転移性腫瘍に関しては照射線量を増やすと胃腸障害が発生しやすいので高線量照射を行うことが困難なことがあります。そこで、当院では標的体積内同時ブースト法(SIB法)という技術を用いて腫瘍内に高線量帯を形成することで放射線の総照射線量を増やすことなくリンパ節転移の制御を向上させる照射概念を提案し実践しています。
*ICE-VMATは当院で考案された治療法ため一般専門用語とは異なることご了承ください。 *ICE-VMATは傍大動脈リンパ節領域内にリンパ節転移が限局している際にのみ保険診療として施行可能です。保険診療外では行っておりません。 |
検査・治療実績
放射線治療実績(原発巣別・のべ新患数)
疾患(原発巣) | 令和3年 | 令和4年 | 令和5年 |
---|---|---|---|
脳・脊髄腫瘍 | 5 | 2 | 2 |
頭頸部腫瘍・縦隔腫瘍 | 1 | 1 | 5 |
肺がん | 27 | 25 | 27 |
乳がん | 37 | 37 | 42 |
胃・食道がん | 5 | 1 | 4 |
肝胆膵がん | 1 | 1 | 3 |
大腸がん | 13 | 17 | 4 |
前立腺がん | 37 | 44 | 66 |
尿路系腫瘍 | 13 | 7 | 5 |
婦人科がん | 6 | 9 | 14 |
血液腫瘍 | 2 | 7 | 0 |
ケロイド・皮膚腫瘍 | 1 | 2 | 6 |
総計 | 148 | 153 | 178 |
上記のうち
脊椎転移 |
27 | 11 | 17 |
研究実績
2023年の論文発表実績
Fujiwara M, Kitada F. Clinical Experience of Intra-tumoral Central-Dose Escalated Volumetric Modulated Arc Therapy for Lymph Node Metastases in Patients With Advanced Cancer. Cureus. 2023 Feb 14;15(2):e34995. doi: 10.7759/cureus.34995. eCollection 2023 Feb.
Fujiwara M, Tada H. Perihippocampal Meningeal Carcinomatosis Following Hippocampal Avoidance Prophylactic Cranial Irradiation in Small Cell Lung Cancer: A Case Report. Cureus. 2023 Oct 4;15(10):e46499. doi: 10.7759/cureus.46499. eCollection 2023 Oct.
2023年の研究発表実績
Fujiwara M, Nakayama J, et al. Effect of Daikenchuto Therapy on Risk of Rectal Bleeding after IMRT for Prostate Cancer. American. Society for Radiation Oncology 65th annual meeting. 2023. San Diego
担当医
藤原 聖輝ふじわら まさてる
医長
略歴・経歴
2009年 広島大学医学部卒業
2015年 大阪大学大学院医学系研究科博士課程(医学)卒業
2015年 堺市立総合医療センター放射線治療科 医員
2017年 吹田徳洲会病院放射線治療科 診療科長/医長
資格・専門医
日本医学放射線学会 放射線科専門医・放射線治療専門医・指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
医学博士
所属学会
日本医学放射線学会
日本放射線腫瘍学会
日本臨床腫瘍学会
小川 和彦おがわ かずひこ
非常勤医師
大阪大学大学院 医学系研究科 放射線治療学講座教授
略歴・経歴
1991年卒
資格・専門医
日本医学放射線学会専門医・指導医
日本放射線腫瘍学会認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
医学博士
所属学会
日本放射線腫瘍学会 理事
日本医学放射線学会 代議員
日本高精度放射線外部照射研究会 常任幹事
日本放射線腫瘍学会小線源部会 常任幹事
日本放射線腫瘍学会生物部会 常任幹事
日本放射線腫瘍学研究機構 理事
日本医学放射線学会関西地方会 世話人
日本癌治療学会
日本癌学会
癌治療増感研究会 幹事
関西Radiology Update 世話人
マイクロセレクトロンHDR研究会 世話人
横断的腫瘍フォーラム 世話人
林 和彦はやし かずひこ
非常勤医師
大阪大学大学院 医学系研究科 放射線治療学講座助教
略歴・経歴
2009年卒
資格・専門医
日本医学放射線学会 放射線科専門医・放射線治療専門医・指導医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
医学博士
理学修士